デジタルレントゲン

 診断用X線装置は、主に胸部単純写真や胃部X線検査(バリウム)で使用しております。胃部X線検査は内視鏡検査の勢いにかき消されてしまった感がありますが、バリウムの検査は長い歴史があり、症例などの積み重ねで、決して悪くない検査法です。しかも簡便で、短時間で検査することができます。一部の胃がん(スキルス胃がんなど)を見つけるのには、胃部X線検査が最も適していると言われております。

 ケイアイクリニックは、質の高い検査が行えるよう日々研究しております。患者さまをお待たせさせないよう、スピーディに効率よく検査を行うためのさまざまな工夫をしております。

 そのほか整形外科系の撮影や腹部単純なども行っております。

医療被ばくが気になる方へ

 

 放射線を使った検査と聞くと、怖い気がする方もいらしゃるかも知れません。日本人は広島、長崎での原爆被爆の体験からその恐ろしさを知っているから無理もないでしょう。しかし、医療領域で使われている放射線は微量なので心配いりません。微量といわれてもピンとこない人も多いと思うので、自然放射線と比較して考えてみましょう。

1.くらしの中の放射線

普段、放射線を意識することはほとんどありませんが、実は、そこいらじゅうに存在しております。それは自然放射線と呼ばれるものです。自然界に普通に存在しており、1人当たりが1年間に受ける量は約2.4ミリシーベルト(世界平均)にもなります。これは胸部写真約10回分に相当いたします。私たちは、この自然放射線を年がら年中浴びているのです。

自然放射線は4つに分類されています。

1)大地からの放射線
大地を構成している土壌や岩石には、ウラン、トリウム、カリウム40などの自然放射性物質が含まれています。

2)空からの放射線
天空からやってくる宇宙線(1次放射線)は高速の陽子やα粒子で、大気に突入し、空気中の酸素や窒素の原子核と衝突して、電子や中性子、パイ中間子、ミュ-粒子などの多数の二次粒子(二次宇宙線)を発生させます。地上に到達する多数の放射線粒子は、はがきの大きさの面積に、毎秒1個程度の割合で、常に降り注いでいます。飛行機で被ばくするのはこれです。

3)食べ物に含まれているもの
主にカリウム40で、このような放射性物質は体内に入ると、一部は排泄されますが、一部は体内に残り、体内から放射線を受けることになります。

4)空気中に漂っているもの
大地に含まれている、ウランやトリウムなどから生じたラドンガスが空気中に漂っています。これらは呼吸することによって体内に取り込まれ、肺などが放射線を受けます。余談ですが、考古学などで使われている炭素14法という年代測定法は、空気中に漂っている放射性物質の炭素14を、動植物が生前にどれだけ取り込んでいたかを測っています。

2.医療放射線の安全性

あなたは,車で買い物に行くことを危険だと思いますか?
たくさん美味しいものを食べることを気にしますか?
医療における線被ばくを気にされるのなら,むしろタバコや暴飲暴食をひかえられることを考えてください。

3.医療被ばくと発がんについて

先日、読売や朝日に掲載された「医療被ばくで発がん率3.2%アップ」という心無い記事について多くの議論があり、心配されている方も多いことと思います。これは反論する然るべき学会が、はっきりとした声明を出さなかったことがより混乱を招いたとも言われています。記事の元ネタがLANCET誌という権威のある医学雑誌の論文だったために、恐れをなして何も言えなくなってしまったのでしょうか?

 この3.2%という値は過大評価の可能性が非常に大きいのです。その計算方法には問題点があります。
高線量のデーターを使って、低線量の影響の計算をしているからです。広島、長崎の原爆被爆者の超高線量一回被曝のデータの発がん率のグラフに外挿して、低線量域の発がん率を無理矢理計算しているのです。原爆のような超高線量と微量な放射線を同じ次元で考えて、正しい結論が得られるのでしょうか?まずはこの点を証明しなければこの論文は無意味です。

 この「低線量の影響を高線量のデータから導き出す」という手法は、ICRP(国際放射線防護委員会)のLNT仮説の考え方をもとにしています。LNT仮説とは、「放射線はどんなに微量でも発ガンのリスクがある」という確率的影響についての仮説です。この仮説は、1つのDNA損傷が起こったとき、その細胞がガン化する確率は、同じ細胞または周辺の細胞に発生した他の損傷の数に関係なく一定と見なしています。したがって、放射線量と発がんの確率は、比例するということになります。しかし、この仮定は多くの実験データと一致していません。

 

 一方、100mSv以下の被ばくは発がんに相関がないという研究も盛んに行われています。発がんのメカニズムは非常に複雑で、少なくとも約10個の遺伝子が関与しているという基礎的実験データがあります。このことから考えると、細胞が発がんへの道のりを開始するのに、1個の遺伝子の損傷で充分だと考えているモデルでは、発がんを説明することはできません。

 ICRPのClarke博士もバックグラウンド程度の低線量については、LNT仮説の直線的外挿は考えていないようです。「しきい値があるか」という質問に対して、彼は「もっと研究が必要である。現実的に放射線は発ガン因子としては弱いものであるので低線量ではリスクは極めて小さいのではないか。」という趣旨の発言をしています。公式にはICRPもLNT仮説を崩していませんが,見直されるかもしれません。

 そもそもLNTモデルは、放射線防護のガイダンスのために作られたものです。放射線防護の観点からすれば、過大評価で安全側にとれる仮説のほうが優秀なのです。しかし、X線検査と発ガン率の相関性を評価するときに、LNTモデルを使ってしまうのはあまりにも短絡的(手抜き?)なのではないでしょうか。安易な計算による過大評価は、一般人をやみくもに怖がらせるだけです。それよりも、リスクとメリットのバランスについては全く触れずに、医療被ばくについて論じている事自体ナンセンスです。CTの肺がん検診を40歳以上の方が受けた場合、リスクよりメリットが上回るという発表もあります。しかも診断領域で使用されている、少ない線量での2次的発がんは未だ実際に確認されていません。こんな経緯は説明せずに、マスコミはむやみやたらに患者さんを怖がらせるような書き方をします。これは診療の妨害行為ではないでしょうか?

 医療における放射線検査は、必ず被ばくのリスクと受ける本人のメリットを考えて、メリットのほうが大きいと判断された場合に行っています。この上でなるべく少ない線量で最大の情報を引き出すべく、工夫を凝らして検査を行っております。従って症状があり医療機関でエックス線写真を撮るように言われた場合は心配せずに受診して下さい。

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