マルチスライスCT

  CT検査は、診断用X線を使って体内の微細な構造をスキャンします。スキャンデータはコンピュータで解析され、CT値というX線の吸収差をあらわす数値となり、画像で表示されます。

 適応範囲は広く、特に出血や石灰化病変の検出感度に優れています。肺野などでは、空気が造影剤の役割を果たすので、強力なコントラスト分解能を発揮します。画像のボケも少なく、肺組織、血管、気管支、腫瘍像の重なりもないので、総合的な空間分解能は、各画像検査機器中で最強でしょう。

 そのほか頭部はもちろん、腹部や骨盤と、オールラウンドに利用され、疾患の診断・治療に必須の機器であります。造影剤を使うと、組織の性状を評価したりなど、さらに詳しく検査することが出来ます。

オプション

①内臓脂肪
②肺気腫

CT検査をお受けになられる方へ

検査当日は、着替えや受付手続き等がございますので、予約時間の15分前には御来院下さい。 予約日時に来られない場合は、ケイアイクリニックまで連絡してください。(03-5269-2111)

【注意事項】

  • 妊娠中、または妊娠をしている可能性のある方は、必ず検査前にお申し出下さい。
  • 必要に応じてヨード造影剤を使用することがあります。アレルギーの既往歴や特定の疾患の有無についてお知らせください。
  • 服用中のお薬は、医師の指示が無い限り、通常通り服用してください。
  • 緊急検査、緊急患者の受け入れのため、予約時間より実際の検査開始時間が多少遅れる場合もございます。
検査前の食事制限について

検査が午前の方は、当日の朝食はとらずにおいでください。
検査が午後の方は、当日の昼食をとらずにおいでください。
水、お茶は制限していませんので、十分に取って戴いて結構です。
何らかの事情により食事をとられる場合は満腹にならないように留意してください。

泌尿器系の検査の方へ

お小水をガマンして(ぼうこうに尿を溜めて)おいでいただいたほうが、より良い検査ができます。

頭部検査の方へ

検査までにピアス、イヤリング、ヘアピン等全て外しておいてください。

検査終了後

後日、専門医師の診断結果をもとに検査所見および今後の治療について説明を受けていただくことになります。 当日のうちに検査結果の概要について説明をご希望の方はその旨をお申し出下さい。
他の医療機関からのご紹介でCT検査をされた方は、基本的にはその医療機関で説明を受けていただくことになっております。

概要説明希望の方以外は、受付で会計を済ませてお帰りになれます。
検査後は食事、飲水ともにすぐ摂って戴いて結構です。

医療被ばくが気になる方へ

 

放射線を使った検査と聞くと、怖い気がする方もいらっしゃるかも知れません。日本人は広島、長崎での原爆被爆の体験からその恐ろしさを知っているから無理もないでしょう。しかし、医療領域で使われている放射線は微量なので心配いりません。微量といわれてもピンとこない人も多いと思うので、自然放射線と比較して考えてみましょう。

1.くらしの中の放射線

普段、放射線を意識することはほとんどありませんが、実は、そこらじゅうに存在しております。それは自然放射線と呼ばれるものです。自然界に普通に存在しており、1人当たりが1年間に受ける量は約2.4ミリシーベルト(世界平均)にもなります。これは胸部写真約60回分に相当いたします。私たちは、この自然放射線を年がら年中浴びているのです。

自然放射線は4つに分類されています。

1)大地からの放射線
大地を構成している土壌や岩石には、ウラン、トリウム、カリウム40などの自然放射性物質が含まれています。

2)空からの放射線
天空からやってくる宇宙線(1次放射線)は高速の陽子やα粒子で、大気に突入し、空気中の酸素や窒素の原子核と衝突して、電子や中性子、パイ中間子、ミュ-粒子などの多数の二次粒子(二次宇宙線)を発生させます。地上に到達する多数の放射線粒子は、はがきの大きさの面積に、毎秒1個程度の割合で、常に降り注いでいます。飛行機で被ばくするのはこれです。

3)食べ物に含まれているもの
主にカリウム40で、このような放射性物質は体内に入ると、一部は排泄されますが、一部は体内に残り、体内から放射線を受けることになります。

4)空気中に漂っているもの
大地に含まれている、ウランやトリウムなどから生じたラドンガスが空気中に漂っています。これらは呼吸することによって体内に取り込まれ、肺などが放射線を受けます。余談ですが、考古学などで使われている炭素14法という年代測定法は、空気中に漂っている放射性物質の炭素14を、動植物が生前にどれだけ取り込んでいたかを測っています。

2.医療放射線の安全性

あなたは,車で買い物に行くことを危険だと思いますか?
たくさん美味しいものを食べることを気にしますか?
医療における線被ばくを気にされるのなら,むしろタバコや暴飲暴食をひかえられることを考えてください。

3.医療被ばくと発がんについて

先日、読売や朝日に掲載された「医療被ばくで発がん率3.2%アップ」という心無い記事について多くの議論があり、心配されている方も多いことと思います。これは反論する然るべき学会が、はっきりとした声明を出さなかったことがより混乱を招いたとも言われています。記事の元ネタがLANCET誌という権威のある医学雑誌の論文だったために、恐れをなして何も言えなくなってしまったのでしょうか?

 この3.2%という値は過大評価の可能性が非常に大きいのです。その計算方法には問題点があります。
高線量のデーターを使って、低線量の影響の計算をしているからです。広島、長崎の原爆被爆者の超高線量一回被曝のデータの発がん率のグラフに外挿して、低線量域の発がん率を無理矢理計算しているのです。原爆のような超高線量と微量な放射線を同じ次元で考えて、正しい結論が得られるのでしょうか?まずはこの点を証明しなければこの論文は無意味です。

 この「低線量の影響を高線量のデータから導き出す」という手法は、ICRP(国際放射線防護委員会)のLNT仮説の考え方をもとにしています。LNT仮説とは、「放射線はどんなに微量でも発がんのリスクがある」という確率的影響についての仮説です。この仮説は、1つのDNA損傷が起こったとき、その細胞ががん化する確率は、同じ細胞または周辺の細胞に発生した他の損傷の数に関係なく一定と見なしています。したがって、放射線量と発がんの確率は、比例するということになります。しかし、この仮定は多くの実験データと一致していません。

 一方、100mSv以下の被ばくは発がんに相関がないという研究も盛んに行われています。発がんのメカニズムは非常に複雑で、少なくとも約10個の遺伝子が関与しているという基礎的実験データがあります。このことから考えると、細胞が発がんへの道のりを開始するのに、1個の遺伝子の損傷で充分だと考えているモデルでは、発がんを説明することはできません。

 ICRPのClarke博士もバックグラウンド程度の低線量については、LNT仮説の直線的外挿は考えていないようです。「しきい値があるか」という質問に対して、彼は「もっと研究が必要である。現実的に放射線は発がん因子としては弱いものであるので低線量ではリスクは極めて小さいのではないか。」という趣旨の発言をしています。公式にはICRPもLNT仮説を崩していませんが,見直されるかもしれません。

 そもそもLNTモデルは、放射線防護のガイダンスのために作られたものです。放射線防護の観点からすれば、過大評価で安全側にとれる仮説のほうが優秀なのです。しかし、X線検査と発がん率の相関性を評価するときに、LNTモデルを使ってしまうのはあまりにも短絡的(手抜き?)なのではないでしょうか。安易な計算による過大評価は、一般人をやみくもに怖がらせるだけです。それよりも、リスクとメリットのバランスについては全く触れずに、医療被ばくについて論じている事自体ナンセンスです。CTの肺がん検診を40歳以上の方が受けた場合、リスクよりメリットが上回るという発表もあります。しかも診断領域で使用されている、少ない線量での2次的発がんは未だ実際に確認されていません。こんな経緯は説明せずに、マスコミはむやみやたらに患者さんを怖がらせるような書き方をします。これは診療の妨害行為ではないでしょうか?

 医療における放射線検査は、必ず被ばくのリスクと受ける本人のメリットを考えて、メリットのほうが大きいと判断された場合に行っています。この上でなるべく少ない線量で最大の情報を引き出すべく、工夫を凝らして検査を行っております。従って症状があり医療機関でX線写真を撮るように言われた場合は心配せずに受診して下さい。

医療従事者様へ

CT・MRI検査の部位別適応比較

各画像検査の診断目的適応を記載しましたので、ご依頼の参考にして下さい。

部位 病変・診断目的 CT MRI 適応
頭部 脳梗塞 急性期はMRI
脳出血・クモ膜下出血 急性期はCT、亜急性期以降の原因検索はMRI
腫瘍 進展範囲の評価はMRI
炎症・変性疾患 質的診断はMRIが第一適応
外傷 急性期、骨折の診断はCT、亜急性期はMRI
血管病変(動脈瘤) スクリーニングはMRA(注1)。精査にはCTA(注2)
脊椎 椎間板ヘルニア
外傷・骨折 脊椎、脊髄領域はMRIが第一適応
脊髄 腫瘍・炎症・変性
頚部 腫瘍・炎症 リンパ節転移の検索はCT、局所精査はMRI
甲状腺・副甲状腺 形態の評価には超音波が有効
肺癌・肺炎 肺野病変の診断はCTが第一適応
間質性肺炎 スクリーニングはCT、精査はMRI
縦隔 縦隔腫瘍 腫瘍はMRI (機能、形態の評価は心エコーも有効)
肺塞栓 大動脈瘤、ASOの評価はMRA(注1)精査はCTA(注2)
心臓 心臓 腫瘍はCT,MRI
血管 血管病変
腹部 肝臓・胆嚢・膵臓 腫瘍、急性腹症はCT
腎臓 腫瘍の良悪性の評価はMRI
腸管
副腎
骨盤 子宮・卵巣 局所の精査はMRI
膀胱
前立腺
関節 骨腫瘍、骨髄の精査はMRI
関節 軟部組織
軟部 骨腫瘍

注1:造影剤を使用しないで血管を描出
注2:造影剤を用いCT撮影し、血管病変を描出

ヨード造影剤禁忌疾患について

絶対禁忌

1. ヨードまたはヨード造影剤に過敏症の既往歴のある患者
2. 重篤な甲状腺疾患のある患者(甲状腺機能に変化を及ぼし、症状の悪化があることがある.)
3. 重症筋無力症の患者

原則禁忌

・ 一般状態の極度に悪い患者
・ 気管支喘息のある患者(アレルギー他の聴取要)
・ 重篤な心障害のある患者、あるいは重篤な肝障害のある患者
・ 重篤な腎障害のある患者 (クレアチニン、BUN高値患者は注意)
・ 急性膵炎の患者
  悪化する場合があるので、膵の形が崩れているなどの急性膵炎の所見が単純CTで見られた
  場合は念のため医師と相談して下さい。
・ マクログロブリン血症の患者
・ 多発性骨髄腫の患者
  全身骨検索を行う疾患なので、事前に全身骨撮影がされていないか、Bence-Jones蛋白という
  タンパクが尿中に排泄されていないかカルテを見て下さい。
・ 褐色細胞腫、およびその疑いのある患者
・ テタニーのある患者

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